馬橇ばそり)” の例文
雪不足の道、といっても名ばかりの道であるが、それを馬橇ばそりで行った。少し行くと、もう人煙を遠く離れたという感じの景色になった。
荒野の冬 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
停車場をのぞいては村のとつつきで四五臺の馬橇ばそりの列が、馬子まごがてんでに積み上げた荷のうへに乘つかつて、村を離れて行くのが小さく見えたきりで
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
はるか向こうを見ると山から木材や薪炭しんたんを積みおろして来た馬橇ばそりがちらほらと動いていて、馬の首につけられた鈴の音がさえた響きをたててかすかに聞こえて来る。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
鉄道はなし、道路も山地の凸凹道で、トラックは勿論、馬橇ばそりもろくに通れない部落が多い。
そこを扮装のスポウツマンとスポウツウウマンとが、けたたましく笑いながら揺れ動いていた。どこにでも人を呼ぶ声があった。空は雪を持って赤い水蒸気だった。山峡には馬橇ばそりの鈴がひしめいていた。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
馬橇ばそりも通つていつたほどだ
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
駅から五里の雪道を、原始林の間を縫い、馬橇ばそりで顕微鏡だの写真の道具だの食糧だのを運ぶのは大仕事であったが、計画は見事成功した。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
馬橇ばそりに材木のように大きな生々しいまきをしこたま積み載せて、その悪路を引っぱって来た一人の年配な内儀かみさんは、君を認めると、引き綱をゆるめて腰を延ばしながら
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
駅から五の雪道を、馬橇ばそりで顕微鏡だの写真用器具だの食料品だのを運ぶのは大仕事であったが、計画は見事成功した。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
全部で百貫位のこれらの荷物を三、四台の馬橇ばそりにのせて五時間の雪道を揺られながら、白銀荘へ着くのはいつも日がとっぷり暮れてしまってからである。