饒舌ぜうぜつ)” の例文
平次もお萬の饒舌ぜうぜつには、お禮を言ひたい程でした。中年女の舌を活溌に動かせる動機が何んであらうと、それは問題外として。
沈黙した海の水を見てゐると、饒舌ぜうぜつには十度の、沈黙には、一度の後悔があるといふ、格言を、富岡は、陸上と海上とを比較して考へさせられてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
彼が数日を費して書き上げた何回分かの原稿は、今の彼の眼から見ると、ことごとく無用の饒舌ぜうぜつとしか思はれない。彼は急に、心を刺されるやうな苦痛を感じた。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二台の馬車に、客はマバラに乗り込みぬ、去れど御者も馬丁ばてい悠々いう/\寛々くわん/\と、炉辺に饒舌ぜうぜつしつゝあり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
夫の詞少きとはうらうへにて、この媼はめづらしき饒舌ぜうぜつなり。そなたは薊生ふる沙原より、われ等に授けられたるイスマエル(亞伯拉罕アブラハムの子)なるぞ。されどわが饗應もてなしには足らぬことあらせじ。
彼は自分がなかなか饒舌ぜうぜつであることを知つて驚いた程であつた。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
ああ大言のアイアース、汝何らの饒舌ぜうぜつぞ!
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
尤も突き詰めた目顏に、溢れる誠意は疑ひやうもなく、世間並の奉公人のやうな饒舌ぜうぜつでないだけに、何んとなく頼母たのもし氣なところがあります。
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
それで書いたのが、この何枚かの愚にもつかない饒舌ぜうぜつである。だから孟浪杜撰まうらうづざんせめむしろ今自分の前に坐つてゐる、容貌魁梧くわいごな紳士にあつて、これを書いた自分にはない。
饒舌 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
事態容易ならずと見ると、日頃の饒舌ぜうぜつを封じて、平次の言ふ儘に、路地の向う側へ廻ります。
平次は乳母の饒舌ぜうぜつを少し持て餘したやうに、側で默つて俯向いて居るお春を顧みました。
お千世の饒舌ぜうぜつも其の問ひには容易に應へられさうもありません。それからおいうの聟や、この家の跡取のことも訊きましたが、お千世はこの問題にもあまり觸れ度くない樣子です。
平次は八五郎の饒舌ぜうぜつを封じて、つと庵室の中を見廻しました。
平次の聲は、間髮を容れずに、お六の饒舌ぜうぜつを封ずるのです。
平次は八五郎の饒舌ぜうぜつを封じて、次をうながしました。
今日はよく/\中年女の饒舌ぜうぜつたゝられる日です。