餓狼がろう)” の例文
けれど、どこかに、餓狼がろうの風貌がある。薄く巻き上がっている腹の中へ、いつ鶏や兎をむさぼり入れようとするか知れたものではない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そう呟きながらも、まだ、餓狼がろうのような、猛悪もうあくな構えは、止めなかった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
それまで唖のように眼を光らしていた男たちは、おおという声とともに、兇悪な餓狼がろうとなって、範宴と性善坊を輪のなかにつつみ、八方から、躍りかかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つ 軍功の施与せよは朝廷直々じきじきの令に待つべきを、北条時行を追って府に入るや、僭上にも身勝手に諸所公領の地をいて、これを餓狼がろうの将士に分つ。罪の五たり。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
追いかけて来た兵は皆、餓狼がろうのごとく地上の財物に気をとられてそれを拾うに、われ勝ちな態だった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
跛行びっこの武者とが、悪びれた様子もなく、使いとして、自分たちの陣営に入って来たのを見ると、殺気立っていた餓狼がろうのような城兵も、敵ながらこの父子を憎む気もちは起らなかった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でなければ餓狼がろうの噛み合いである、——と彼は、自分自体のものからして現世を見ていた。疑いぶかいのもそのせいであり、人いちばい貪欲どんよくなくせに、一面消極的なのも、そのせいであった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今川西上の場合は、一たまりもあるまいと、四辺の国は、織田をている。——崩れたと見たら、一片の肉に餓狼がろうの寄るように、分け前を争う敵が、今川と呼応してなだれこむにきまっていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
好んで、餓狼がろうの将を迎え入れる必要がありましょう
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
餓狼がろうが餌を争うように二人をおおいつつんだ。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)