青萱あおかや)” の例文
越後などでは、七月二十七日を青箸の日と名づけて、必ず青萱あおかやの穂先を箸に切って、その日の朝の食事をする村が多かったそうです。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夏は翡翠ひすい屏風びょうぶ光琳こうりんの筆で描いた様に、青萱あおかやまじりに萱草かんぞうあかい花が咲く。萱、葭の穂が薄紫に出ると、秋は此小川のつつみに立つ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして青萱あおかや蓬々ほうほうと足に絡まる墓場の中を、跫音を忍ばせて近づいて行った私は、つい二、三間先のその辺でも殊に大きな墓の前に三人の男女がたたずんでいるのを見たのであった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
かさ/\と鳴る畑の玉蜀黍とうもろこし。ざわ/\と鳴る田川のくろ青萱あおかや。見れば、眼に入る緑は皆動いて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この静かな石段を上って古びた庫裏くりと本堂一帯の裏山を掩った真暗な森に沿いながら、青萱あおかやの茂っている淋しい墓場の一角を分け入って、一面に海の見晴らせる断崖の上に腰を降ろしていると
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)