雑仕ぞうし)” の例文
『や。ちょうどよいおりに戻った。平太、見知っておいてくれい。家内かないだ。——去年まで、上西門院じょうせいもんいん雑仕ぞうしに召されていた袈裟けさまえと申すもの』
行子が黒谷の尼院のつぼねまがいで、似たような境遇の預姫あずかりひめと長い一日をもてあましていたころ、雑仕ぞうし比丘びく尼たちの乏しい食餌しょくじに悩み、古柯こかという葉を灰で揉んで噛んだり
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
滝口は十三の時、建礼門院に仕える女官で身分の低い雑仕ぞうし横笛よこぶえという女を知り、互いに愛し合う間柄となった。しかし父の三条斎藤左衛門大夫茂頼もちよりはそれが気に入らなかった。
まず第一に、彼女が西華門院に雑仕ぞうしとして上がる前から養われていた北ノ大路の学僧玄恵法印を、成輔が直接たずねた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また、お内儀もそのかみは、後宇多院ごうだいんのみきさき西華門院せいかもんいんのお内で、雑仕ぞうし卯木うつぎと仰せありし小女房でおわしたの」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——烏丸からすまどのが御自慢の家臣元成と、西華門院の雑仕ぞうし卯木うつぎは、火もおろかな仲とみゆるが、さて、千種殿ちぐさどのの弟君が、だまって指をくわえていようか」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上西門院の雑仕ぞうしだった袈裟御前けさごぜだ。あの不器ぶきッちょが、よくもあんな美人を射落して、宿の妻にしたと思うが、そのまた、愛しかたも、ひと通りではない。
ここには、鳥羽の第二の皇女、統子内親王が住まわれている。——袈裟も、もとは、ここの雑仕ぞうし。盛遠も、遠藤三郎盛遠といい、以前、ここの侍所さむらいどころにいたことがある。
端には、夏引なつびき、今まいり、青柳などとよぶ雑仕ぞうしまでが、こぼるる花かごのようにいたのである。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)