隙々ひまひま)” の例文
そこで私は仕事の隙々ひまひまを見て、桜の木で、そのままそっくりに模刻をした。そして右の観音を仏間に飾って置いたのでした。
記者はこうして、九月初めから十月なかばまでの東京市中を、縦横むじんにあるきまわった。蜘蛛手くもで掻く縄十文字に見てまわった。用事の隙々ひまひまや電車待つにはスケッチも試みた。
彼女は今絶望のどん底にあるものらしかったが、客にサアビスする隙々ひまひまに、詩作にふけるのであった。毎日々々の生活が、やがて彼女の歔欷すすりなきの詩であり、むごい運命の行進曲であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
馬琴は用事の隙々ひまひまにそれらの書物を渉猟し、飽無き智慧慾を満足させた。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして冬中女の手のへらされた勝手元の忙しい働きの隙々ひまひまに見るように、主婦からあてがわれている仕事に坐った。仕事は大抵、これからの客に着せる夜着や、綈袍どてらや枕などの縫釈ぬいときであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)