陥欠かんけつ)” の例文
文学の目的が直接にこのへいを救うにあるかどうかは問題外としても情操文学がこの陥欠かんけつを補う効果を有し得る事はたしかであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
でこう云う事は、何か陥欠かんけつがあると起るもので、事件その物を見ると何だか生徒だけがわるいようであるが、その真相を極めると責任はかえって学校にあるかも知れない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いないとみずから欺いているのだ。——どんな社会だって陥欠かんけつのない社会はあるまい」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元来はせいであるべき大地だいちの一角に陥欠かんけつが起って、全体が思わず動いたが、動くは本来の性にそむくと悟って、つとめて往昔むかしの姿にもどろうとしたのを、平衡へいこうを失った機勢に制せられて
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かすかなる陥欠かんけつは言辞詩歌の奥にひそむか、又はそれを実現する行為の根にからんでゐるか何方どつちかであらう。余は中佐のあへてせる旅順閉塞の行為に一点虚偽の疑ひをさしはさむを好まぬものである。
艇長の遺書と中佐の詩 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
作家として陥欠かんけつのある人間でなければなりません。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)