降人こうじん)” の例文
と、その鹿之介は、即日、城を開いて、吉川きっかわ元春の陣所へ出向き、雑兵同様、意気地のない降人こうじんとして名乗り出たのであった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
単于ぜんう幕下ばっかには、李陵りりょうのほかにも漢の降人こうじんが幾人かいた。その中の一人、衛律えいりつという男は軍人ではなかったが、丁霊王ていれいおうの位をもらって最も重く単于に用いられている。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
順序としていえば、前月の二月二十六日、尊氏は降人こうじんとして、終日のぬかるみと小糠雨こぬかあめにまみれた姿で京都につき、夜、上杉朝定ともさだのやしきに入った。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尼子勝久は、切腹して、城兵の助命を敵に仰ぎ、山中鹿之介幸盛は降人こうじんとなり、毛利の軍門にひざまずいた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうえ上赤坂城はすでに陥ち、平野将監らも降人こうじんとなったりして、かなりの死傷も出していたことだった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふむ。それは妙だ。してその降人こうじんを、都督には、どう用いて、曹操の裏をかくおつもりか? ……」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いまは誰のために戦わん」といって、みな蜀軍の麾下きかへ、降人こうじんとなって出た。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜀を脱して魏の降人こうじんに出る者があとを絶たない有様となりました。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)