附髭つけひげ)” の例文
で、彼は何をしたかというと、ある夜のこと、頭から足の先まで、すっかり外で調えた新しい服装で、鼻の下へはチョッピリ附髭つけひげまでして、つまり手軽な変装をしたんだね。
一人二役 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
着換えてしまってみると、右のポケットに精巧な附髭つけひげと黒い鼈甲縁べっこうぶちの色眼鏡があるのを探り当てたので、早速それを応用した。手鏡に写してみるとどうみても一流の芸術家だ。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
次の間へかす位にまでてやったのに、何んだヤイ悪党、鼻の下へ附髭つけひげか何だか知らねえがはやかして、洋服などを着て東京とうけい近い此の伊香保へ来て居るとは、本当に呆れちまったな
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また、その頃に西郷鍋というものを売る商人あきんどが来た。怪しげな洋服に金紙きんがみを着けて金モールと見せ、附髭つけひげをして西郷の如くこしらえ、竹の皮で作った船のような形の鍋を売る、一個一銭。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ぴんとはねたる附髭つけひげに、雪はふるふる、日は暮れる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)