附箋ふせん)” の例文
預けられた里をまるで附箋ふせんつきの葉書みたいに転々と移ってきたことだけはたしかで、放浪のならわしはその時もう幼い私のからだにしみついていたと言えましょう。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
一度こちらから親の家へ尋ね合した手紙は、久しく前に移転して住所不明の附箋ふせんで返されて来た。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
ずっと前から註文してあったリルケの「鎮魂歌レクヰエム」が二三冊の本と一しょに、いろんな附箋ふせんがつけられて、方々へ廻送されながら、やっとの事でいま私のもとに届いたのだった。
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
約束した仕送しおくりは無論寄さなかつた。のちには手紙が附箋ふせんを附けたまゝ戻つて来た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
その実家をきただして手紙を出してみると、移転先不明の附箋ふせんが附いて返って来た。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)