阿爺おとっさん)” の例文
「断ったんだとも。この間行った時に、宗近の阿爺おとっさんに逢って、よく理由わけは話して来たのさ。——帰ってから御前にも話した通り」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
急報に接して飛んで往った次郎さんの阿爺おとっさんも、に合わなかったそうである。夜にかけて釣台つりだいにのせて連れて来て、組合中くみあいじゅう都合つごう今日きょう葬式そうしきをすると云うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
叔母さんが云うには、今はまだいけないが、はじめさんが外交官の試験に及第して、身分がきまったら、どうでも御相談を致しましょうって阿爺おとっさんに話したそうだ
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
阿爺おとっさんは、亡児なきこ枕辺まくらべすわって、次郎さんのおさだちの事から臨終前後の事何くれとこまかに物語った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「冷えてるのはいいが、硬過こわすぎてね。——阿爺おとっさんのように年を取ると、どうもこわいのは胸につかえていけないよ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お爺さんは「村入」で「わしとおまえは六合の米よ、早く一しょになればよい」と中音ちゅうおんに歌うた寺本の勘さん、即ち作さんの阿爺おとっさんで、背の女児は十六で亡くなった其孫女でした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)