鍋墨なべずみ)” の例文
白粉おしろいすす鍋墨なべずみ、懐中電灯、電池などと資材は集められた。骸骨おどりのすごさを増すために鬼火おにびを二つ出す計画が追加された。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また、ある書に、「灯心に丁字頭ちょうじがしら立てばひでりなり」「鍋墨なべずみに火点ずれば雨晴るる」という。ある人の天気を詠ずる歌に
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
山育ちの娘も本能として、少しは親を大事にする気持があるらしく、その日から娘二人は、山男の身なりで、おどけ者の妹は鍋墨なべずみで父にそっくりの口髭くちひげなど描いて出かけ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
此奴こいつかおの黒いこと、鍋墨なべずみ墨汁すみじるとを引っ掻き交ぜて、いやが上に、ところきらわず塗り立て掃き立てたと見えて、光るものはただ両つの白眼しろめばかりの、部厚な唇だけを朱紅に染めてから
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
有名な窃盗犯で鍋墨なべずみの雁八という……
骸骨の黒穂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それにはね、まずはじめに白粉おしろいで骸骨の骨の白いところをかいてしまうんだ。上は顔から、下は足までね。それから残ったところを鍋墨なべずみすすかでもって、まっくろに塗っちまうのさ。
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
月がかさをかぶれば雨であるとか、夕やけがすると天気の前兆であるとか、あるいは行灯あんどんの灯心にちょうができれば天気の兆候であるとか、鍋墨なべずみに火が付けば晴天の兆しであるとかいうごとく
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)