銭函ぜにばこ)” の例文
「買います、買います。踊の方はいりません。そら、十円。」おかみさんは青くなってブルブルしながら銭函ぜにばこからお金を集めて十円出しました。
人の銭函ぜにばこへ手を入れたり自分のうちからあらかじめ五百をもって行ったりすることから、勘定のときに誰かがすくなく言ったようだったら自分の分は勘定しないで
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
柳吉は白い料理着に高下駄たかげたといういきな恰好で、ときどき銭函ぜにばこのぞいた。売上額がえていると、「いらっしゃァい」剃刀屋のときと違って掛声も勇ましかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
少し痘痕あばたある鳳眼にして長面の片山君は、銭函ぜにばこの海岸で崖崩れの為死んだ愛犬の皮を胴着にしたのを被て、手細工らしい小箱から煙草をつまみ出しては長い煙管でふかしつゝ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
手近に金のない時は、板片いたぎれの端にもちをつけて、銭函ぜにばこの中から銀貨を釣り出した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
朝里張碓あさりはりうすは斯くて後になつて、銭函ぜにばこを過ぐれば石狩の平野である。
雪中行:小樽より釧路まで (新字旧仮名) / 石川啄木(著)