つぐ)” の例文
といひかかるを、奥様目顔で制したまへば、老女は本意なげに口をつぐみたれどさすがに老の繰言止め難くや、更に詞をあらためて
磯馴松 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
取外とりはずして言いかけて倏忽たちまちハッと心附き、周章あわてて口をつぐんで、吃驚びっくりして、狼狽ろうばいして、つい憤然やっきとなッて、「畜生」と言いざまこぶしを振挙げて我と我をおどして見たが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
高い男は中背の男の顔を尻眼しりめにかけて口をつぐんでしまッたので談話はなしがすこし中絶とぎれる。錦町にしきちょうへ曲り込んで二ツ目の横町の角まで参った時、中背の男は不図ふと立止って
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かと思うとフト口をつぐんで真面目まじめに成ッて、憶出おもいだしたように額越ひたえごしに文三の顔をながめて、笑うでも無く笑わぬでもなく、不思議そうな剣呑けんのんそうな奇々妙々な顔色がんしょくをする。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)