釜無かまなし)” の例文
「さあさあ太夫たゆうさん一踊り、ご苦労ながら一踊り……〽男達おとこだてならこの釜無かまなしの流れ来る水止めて見ろ……ヨイサッサ、ヨイサッサ」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
富士山と釜無かまなし川の大断層と、南アルプスや、関東山脈の高屏風たかびょうぶに囲まれた日本最大の裾野が、大空を持ちあげるばかりの力をみなぎらして
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
甲州の教良石は信濃の諏訪すわ郡に接する釜無かまなし川の岸にある。教良石民部は『甲陽軍鑑』時代の猛者もさであるからその在名は新しいものではない。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
高き金峰きんぷ山は定かならねど、かやが岳、きんが岳一帯の近山は、釜無かまなし川の低地をまえに、仙女いますらん島にも似たる姿、薄紫の色、わが夢の色。
雪の武石峠 (新字新仮名) / 別所梅之助(著)
くたびれて吾のいきづく釜無かまなしの谷のくらがりに啼くほととぎす
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼奴あいつは有名な悪党なんですよ。ええ、あの一座の親方って奴はね。ちょっと私とも知己しりあいなんで。釜無かまなしぶんというんでさ。……ああ本当に飛んだことをした。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
甲州の武田は、釜無かまなし川の上流に名字の地があったがための武田であるけれども、そのある者は上総かずさに移住し、またある者は若狭わかさに移住してもやはり武田を名乗っている。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
甲斐の盆地の夏景色は、何んともいえず涼々すがすがしく、釜無かまなし河原には常夏とこなつが咲き夢見山には石楠花しゃくなげが咲き、そうしてお館の木深い庭を蛍が明滅して飛ぶようになった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『甲斐国志』及び同地方の五万分一地形図を見ると、甲府の南から笛吹ふえふき釜無かまなしの川合に掛けて、しばしばこの川の水害を被むる村方に紙漉阿原かみすきあわら臼井うすい阿原・何阿原という地名がたくさんにある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ところが神様の罰があたり、わしは迂闊うっかりその秘密を「釜無かまなしぶん」めに話してしまった。文は宝壺をよこせと云った。だがわしは承知しなかった。そこで文めは仇をした。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)