野鴨のがも)” の例文
人の話に依りますと「ヘルマンとドロテア」も「野鴨のがも」も「あらし」も、みんなその作者の晩年に書かれたものだそうでございます。
猿面冠者 (新字新仮名) / 太宰治(著)
野鴨のがもの図でも布袋図ほていずでも、武蔵の画にはどこか禅味がただよっている。或る意味では、彼の作画は「禅画」とも云いえられる。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、おもいました。それでかれつぶって、なおもとおんできますと、そのうちひろひろ沢地たくちうえました。るとたくさんの野鴨のがもんでいます。
静かな番人の親子が野鴨のがもの子などを飼っている。そこまで出かけぬとこの鳥は聴くことが出来ない。
黄泥色の濁りに底うなりを立てて蠢動しゅんどうして行った。ときどき野鴨のがもの群れが羽ばたいてび立った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
どこかで野鴨のがもが啼いてます。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
その飾り窓には、野鴨のがも剥製はくせいやら、鹿の角やら、いたちの毛皮などあり、私は遠くから見ていたのであるが、はじめは何の店やら判断がつかなかった。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いつもそこは、野鴨のがもの丸揚げや餅など売っている場所なので、その混雑かと思うていたが、ふと見ると、大勢の頭の上に、高々と、立札が見えている。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雁や野鴨のがもの渡り鳥も、この池でその羽を休める。庭園は、ほんとうは二百坪にも足りないひろさなのであるが、見たところ千坪ほどのひろさなのだ。すぐれた造園術のしかけである。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)