野犬のいぬ)” の例文
種彦は慄然りつぜんとしてわが影にさえ恐れを抱く野犬のいぬのように耳をそばだてたが、すると物音はそれなり聞えず二階の夜は以前の通り柔かな円行燈の光ばかり。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何物にか執着しふぢやくして、黒くげた柱、地にゆだねたかはらのかけらのそばを離れ兼ねてゐるやうな人、けものかばねくさる所に、からす野犬のいぬの寄るやうに、何物をかさががほにうろついてゐる人などが
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)