重錘おもり)” の例文
髪毛の先に重錘おもりをつないで置いて、それから湯を鍵孔に注ぎこむ。すると、湿度が高くなって髪毛が伸び、重錘がさがり落し金が下りるのです。
方子と末起 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
縄の末端に結びつけられた重錘おもりの重さの相違で縄は動くのだ。縄が動くにつれて歯車はきりきりと低い音を立てて廻る。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
自分は男の身体について居る重錘おもりのやうに、段々男を浮ぶ瀬のないやうに、沈落させて行くのだと思ふと、女は心の底から男に済まないと思ひ出した。
海の中にて (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
ランプの回転動力なる重錘おもりを、塔の中心の空洞につるしているはずのロープは、もろくもたたき切られていた。
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
生きながら皮袋に入れて水の中に放り込んでしまうのもあり、また船に乗せ川の中流に連れて行って、そうしてそれをくくって水に漬け石の重錘おもりを付けて沈めるのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
なおこの乞食にはまさるべし、思えば気の毒の母よ子よと惻隠そくいんの心とどめがたくて、覚えず階上より声をかけつつ、妾には当時大金なりける五十銭紙幣に重錘おもりをつけて投げ与えけるに
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
つまりピアノ線の両端に重錘おもりをつけたようなものを矢鱈やたらと空中に打ち上げれば襲撃飛行機隊は多少の迷惑を感じそうな気がする。少なくも爆弾よりも安価でしかも却って有効かもしれない。
烏瓜の花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
黒金の重錘おもりの下に
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
所がその中には、重錘おもりと詰め物が詰まっていると思いのほか、蓋の開きにつれて得も云われぬ悪臭が立ち上って来る。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ランプの回転が止って閃光せんこうが不動光になり、間もなくガス管の故障で灯も消える……一方粉砕された旋回機に巻きついていたロープは切れて、回転動力の重錘おもりというか分銅というか
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
重錘おもりをかけて深い井戸に投げ込まれた灯明のように、深みに行くほど、君の心は光を増しながら、感じを強めながら、最後には死というその冷たい水の表面に消えてしまおうとしているのだ。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして、鍵穴から湯を注ぎ込む。すると、当然湿度が高くなるから、毛髪が伸長して、重錘おもりが紐の上に加わってゆき、勿論紐が弓状ゆみなりになってしまう。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「一トン……一トンというと二百六十六貫強ですね。じゃああのランプをグルグル廻しながら、三十六メートルの円筒内を下って来る、あの原動力の重錘おもりというか分銅は、随分重いでしょうね?」
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
そこで、落し金の支点に近い一点を結んで、その紐を、倒れた場合水平となるように張っておき、その線の中心とすれすれに、頭髪の束で結んだ重錘おもりを置いたと仮定しよう。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そして、最後に二十六番目の死体が——それも麻布にくるまれ、重錘おもりと経緯度板をつけたままの姿であるが——ドンブリと投げ込まれたとき、火気を呼んだ火縄函みちびばこが、まるで花火のような炸裂さくれつをした。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)