邪気じゃき)” の例文
旧字:邪氣
と、威張ってみたり、多分なる茶気ちゃき邪気じゃき莫迦ばからしさをも、その時分の老公には、つつみなく素行に現わされていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実際生活を暗指あんじしつつ恋愛情緒れんあいじょうしょを具体的にいって、少しもみだらな感をともなわず、ねたましい感をも伴わないのは、全体が邪気じゃきなくこころよいものだからであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
こうした邪気じゃきが予備的に私の自然を損なったためか、または私がまだ人慣ひとなれなかったためか、私は始めてそこのおじょうさんに会った時、へどもどした挨拶あいさつをしました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あい。末々までもと申すのではござりませぬ。御出家姿となって最初の夜のお情をうけたら、邪気じゃきが払われて必ずともにしあわせが参るとこのように修験者共が申しましたゆえ、本当にもし——」
僕は、お前のひたいにキスしたんだ。それに、にんじんは、あの年で、もう邪気じゃき満々まんまんなもんだから、それが純粋な、清浄潔白しょうじょうけっぱくな接吻で、父親が子供にする接吻みたいなものだってことがわからないんだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
牝牛めうしちちのようにあま女親おんなおやなみだのなかに、邪気じゃきも、よくも、なにもなく、身をひたりこんだ蛾次郎がじろうのすがたを見ていると、だれもかれに少しのにくしみも持てなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)