那処いずく)” の例文
旧字:那處
神酒をいただきつつ、酒食のたぐいを那処いずくより得るぞと問うに、酒は此山ここにてかもせどその他は皆山の下より上すという。人馬のついえも少きことにはあらざるべきに盛なることなり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
筒袖の単衣ひとえ着て藁草履わらぞうり穿きたる農民のおんなとおぼしきが、鎌を手にせしまま那処いずくよりか知らず我らが前に現れ出でければ、そぞろに梁山泊りょうざんぱくの朱貴が酒亭も思い合わされて打笑まれぬ。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あらはれて国法にそむきたる罪を問はれなばそれまでなりと、深く地を掘りて密室をそのうちに造り設け、表面うわべ那処いずくへか棄てたるやうにもてなして父をば其室そこに忍ばせ置き、なほ孝養を尽しける。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)