遠霞とおがすみ)” の例文
見附の火の見やぐら遠霞とおがすみで露店の灯の映るのも、花の使つかいながめあえず、遠火であぶらるる思いがしよう、九時というのに屋敷町の塀に人が消えて、御堂みどうの前も寂寞ひっそりとしたのである。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
花畠はなばたけむぎの畠、そらまめの花、田境たざかいはんの木をめる遠霞とおがすみ、村の小鮒こぶな逐廻おいまわしている溝川みぞかわ竹籬たけがき薮椿やぶつばきの落ちはららいでいる、小禽ことりのちらつく、何ということも無い田舎路ではあるが
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)