連子つれこ)” の例文
で、間もなく王昭君は、呼韓邪単于との間に儲けた伊屠智牙師いとちがしという子を連子つれことして次代の単于の雕陶漠皐まうとうばくさいへ喜びを以て嫁入った。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
表向は長男で、実は光子の連子つれこになる為年ためとしが丁年になった時、多年秘密の父から光子の手許てもとに送られていた教育費が途絶えた。約束の年限が終ったばかりではない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なし表向は船乘内證は博奕を渡世として子分も出來できしにより妻を向へしにかれ連子つれこの太七と云ふを實子の如くに不便ふびんを加へ月日を送り居たりけり其頃大坂堂島に彦兵衞ひこべゑと云者小間物こまもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分が倫敦ロンドンで泊つたフインボロオグ・ロオド二十八番地のフイルプス夫人の家は、主人が有名な建築家で、夫人の連子つれこであるせん良人をつとの令息も同じく建築家として父の工場こうぢやうへ通つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
善庵、名はてい、字は五鼎、実は江戸の儒家片山兼山かたやまけんざんの子である。兼山の歿したのちつまうじが江戸の町医朝川黙翁もくおうに再嫁した。善庵の姉寿美すみと兄道昌どうしょうとは当時の連子つれこで、善庵はまだ母の胎内にいた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)