退引のっぴ)” の例文
それでお母さんは退引のっぴきさせないように、葉書や切手はもとよりのこと通信に必要な品を一切お父さんの机の引出しに揃えて置く。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それと同時にそこまで退引のっぴきのならぬように追求して来る執拗な女の態度が急に重苦しい圧迫を吉田に感じさせたからだった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
それほどの病気ならばこちらへ引取って介抱しとうなるのが人情。まさかに満月の身体からだ無代価ただで引取る訳には行くまいと仰言る、退引のっぴきならぬお話。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
退引のっぴきならぬどたん場に迫られ、初めて犯す罪の——入った家は筑紫屋茂兵衛の寮であったのだ。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
退引のっぴかせず詰寄るに従って、お夏はますます庇立かばいだて、蔵人に押被おっかぶさるばかりにしつつ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白女はこれで朝霞の退引のっぴきならぬ弱身を掴んだと思い、正面切って保嗣に働きかけたが、保嗣は冷静で賢い青年だったので、ここでなにかしでかしたら泰文の腰刀の一と突きを食うだけだと
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そうすることによってやっと自分一人が寝られないで取り残される夜の退引のっぴきならない辛抱をすることになるのだった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
で、退引のっぴきあらせず。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
するとその女はすかさず「南の方のどこ、××町の方かそれとも○○町の方か」というふうに退引のっぴきのならぬように聞いて来るので、吉田は自分のところの町名
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)