軽佻けいてう)” の例文
旧字:輕佻
欧洲の文明国にあるものとし言へば直ちに輸入し来らんとする軽佻けいてうなる欧化主義者流と反対の位置に立たんとするものなり。
一種の攘夷思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
この数篇の文章の中に軽佻けいてうの態度を求めるのは最も無理解の甚だしいものである。僕は締切り日に間に合ふやうに、匆忙そうばうとペンを動かさなければならぬ。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
巴里パリイの女は軽佻けいてうで無智で執着に乏しさうであるが、英国の女はその反対の素質を余計に持つて居るのではないか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この心持はわざと軽佻けいてう、浮薄、不徳などゝいふことを見得にするやうになつた。
現代と旋廻軸 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
滑稽な軽佻けいてうな調子から、それはロンドンの東街ひがしまち寄席よせなどで歌ふ流行唄はやりうたらしい。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「美」は肉眼の軽佻けいてうなる判断によりて凡人に誤解せらるゝと同じく、雄大なる詩人哲学者をも眩惑しつゝある者なり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
その二は軽佻けいてう浮薄也。軽佻浮薄とは功利の外に美なるものを愛するを言ふ。
左れば文人の恋愛に対するや、すべからく厳粛なる思想をて其美妙を発揮するをつとむべく、苟くも卑野なる、軽佻けいてうなる、浮薄なる心情を以て写描することなかるべし。
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そも元禄文学の軽佻けいてうなるは其章句の不覊ふき放逸なるが故のみならずして、其想膸の軽佻なるが故なり。