蹣跚よろ)” の例文
帆村が蹣跚よろめくのを追って、私が右にヨタヨタと寄ると、帆村は意地わるくそれと逆の左の方にヨロヨロとかたむいてゆくのだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
微かな揺れかえしがきた時、中腰になっていた寿女は大袈裟に蹣跚よろけて隣りの枠台に手をつき、胡粉皿がひっくりかえった。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
博士は忽ち感激して興奮のあまりつひフラフラと再び悶絶しさうに蹣跚よろめき乍ら立ち上つたが、辛うじて立ち直ると——
霓博士の廃頽 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
兎もすれば蹣跚よろけて倒れそうになったり、時々左右の室へぶつかったりして、彼はノロノロと歩いて行った。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おつう、よきことおこせ」勘次かんじはさういつて自分じぶんひとつに蹣跚よろけながらつた。おつぎは與吉よきち身體からだはげしくうごかしたが熟睡じゆくすゐしてしまつたので容易よういひらかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三間先のコンクリート壁体へきたいめるようにして歩いていた帆村は、四ツ角を見付けると嬉しそうに両手をあげ、まるでゴールのテープをるような恰好をして、蹣跚よろけていった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その良人の掌の温みに夫人はまごついて、何度も飛石につまずいては蹣跚よろけた。
女心拾遺 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)