蹈台ふみだい)” の例文
旧字:蹈臺
或日、良寛さんは国仙和尚から、米をけと命ぜられた。良寛さんは黙つて本を閉ぢて、台唐臼だいがら蹈台ふみだいにのぼつた。そして搗きはじめた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
と云って、すぽりと引込ひっこむ。——はてな、行燈が、かがみに化ける……と松崎は地の凸凹でこぼこする蹈台ふみだいの腰を乗出す。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
専ら父が築いてくれた有利な地盤を蹈台ふみだいにして、弁舌と、機智と、世才とを以て巧みに上長に取り入りつゝ下尅上げこくじょうの時勢に乗じたのであるから、大名とは云うものゝ
耳朶みみたぼ黒子ほくろも見えぬ、なめらかな美しさ。松崎は、むざとたかって血を吸うのがいたましさに、蹈台ふみだいをしきりに気にした
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前の夫との間に出来た幼い娘が住んでいる英国に渡ることにあって、伯林へ行くのは、旅費その他の関係から、一旦欧洲おうしゅう大陸の一角に辿たどり着いた上で、そこを蹈台ふみだいにしようと云う訳なのであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)