跛者びっこ)” の例文
かたわらに引き添ったは童子の紅丸べにまる、並んでいるのは猪十郎。この二人にも変化はない。一人は珠のように美しく、一人は醜くて跛者びっこである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
フロールでさえ……あんなに親しかったフロールでさえ、跛者びっこと一緒に学芸会へ出るのは恥ずかしいと言ったではないか!
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
米友は、そう思って、跛者びっこではあるけれども達者な足を引きずって、昌平橋をずんずんとのぼって行きました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
親分肌の学者で、跛者びっこだ。すっかり露化していて、ルバシカに、室内でも山高帽をかぶっている。
その男は跛者びっこらしかった。
跛者びっこだ——親分」
花咲いた十本の薬草を、頂きにのせた薬剤車、それを引いている跛者びっこの猪十郎、後押しをする美童の紅丸、先に立ったは薬草道人、肩に白烏が停まっている。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だって、先生! 跛者びっこなんですもの。あたし恥ずかしいわ」と、明らかにフロールの声であった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
しかも気持は一足飛びに少年の昔にさかのぼって、二十七年前に跛者びっこと一緒に演壇に立つのは厭だと言われて泣いて学校から帰って来たあの時の気持と寸分の違いもなかった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「物質的には食傷している。精神的には空腹だ。これが現在の生活だ。変に跛者びっこの生活だなア」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一人の男は跛者びっこと見えて、ひどく左手へ傾いている。もう一人の男は傴僂せむしと見え、顔が地面へ垂れ下がっている。距離がへだっているために、顔ははっきり解らなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「撞木杖をついた跛者びっこの武士が辻斬りをするということでござるが」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
跛者びっこでなくてみつ口でござんす」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)