赤裸はだか)” の例文
男学生はともかく、女学生に僕の赤裸はだかを見られていると思うと、消えて入りたかった。僕は、逃げだした服を追いかけた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いくらこつこつやったって、まさか赤裸はだかで飛び出して、へやじょうを明ける訳にも行かないから、風呂の中から大きな声で、おい何だと用事を聞いて見た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔預言者イザヤが三年の間赤裸はだか跣足はだしでエルサレムの町を歩んだり(イザヤ二〇の二—四)、エレミヤが徳利を壊し(エレミヤ一九の一〇)、くびきを首にかけ(同二七の二)
雨戸に、その女を赤裸はだかかすがいで打ったとな。……これこれ、まあ、聞きな。……真白まっしろな腹をずぶずぶと刺いて開いた……待ちな、あの木戸に立掛けた戸は、その雨戸かも知れないよ。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だからもう赤裸はだか同然よ。ただもう逃げればっていうんで逃げたもんだから、旅費はすぐ無くなっちゃうし、仕様がないから、無くなったところで降りて、それからすぐ新聞社へ駈けつけたの。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
しかし長谷川君の話し方は初対面の折露西亜の政党を論じた時とごうことなるところなく、呂音りょおんで落ちついて、ゆっくりしているものだから、全く赤裸はだかと釣り合わない。
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕がやっきになって一人角力ずもうをとっているうちにとうとう僕は赤裸はだかになってしまった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
義理の着物を脱いで便利の赤裸はだかになれるものなら、降っていた温泉へ得たり賢こしと飛び込む気にもなる。しかし体裁に着る衣裳いしょうはそう無雑作むぞうさぎ取れるものではない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いくら貧乏だって、洋服の一着ぐらい拵えるのは当り前だよ。拵えなけりゃ赤裸はだかで往来を歩かなければなるまい。拵えたって結構じゃないか。誰も何とも思ってやしないよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)