赤城下あかぎした)” の例文
そのころよく赤城下あかぎした骨董店こっとうてんをひやかして、「三円の柳里恭りゅうりきょう」などを物色して来ては自分を誘ってもう一ぺん見に行かれたりした。
夏目漱石先生の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あっしゃ全体、神田の豊島町としまちょうで生れたんだけれど、牛込うしごめ赤城下あかぎしたに住んでたのさ。お父さんはお組役人——幕末あのころ小役人こやくにんなんざ貧乏だよ。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
以前は西川伊登次いとじという看板をかけていた踊りの師匠で、今では高山という銀座役人の囲いものになって、牛込の赤城下あかぎしたにしゃれた家を持って贅沢に暮らしている。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤城下あかぎしたの邸で、新蔵が心配しているに違いないと、あくあさは、真っ先に起きて戸外おもてへとび出した。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はその時赤城下あかぎしたへ家を借りて婆やを置いて我儘わがままな生活をしていた。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
よそながら其の品の出所しゅっしょをたずねると、牛込赤城下あかぎしたのある大身たいしんの屋敷から内密の払いものであるが、重代の品を手放したなどということが世間にきこえては迷惑であるから
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
赤城下あかぎしたあたりの坂道。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日枝ひえ神社の本祭りで、この町内では踊り屋台を出した。しかし町内には踊る子が揃わないので、誰かの発議でそのころ牛込うしごめ赤城下あかぎしたにあった赤城座という小芝居の俳優やくしゃを雇うことになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)