質物しちもつ)” の例文
質物しちもつを持って来る客出入りに都合がわるいと考えましたから、上へあげて、久米之丞が話し出す用件を神妙に聞き終りました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こたへてわたくし夫婦八ヶ年浪人の身の上ゆゑ油屋五兵衞方へ衣類いるゐ大小等だいせうとう質物しちもつあづおきし處約束の月切つきぎれに相成質屋しちやよりは度々たび/\催促さいそくなれども其品々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
帰るときに、形代であるから此の首を置いてゆくと云ったが、番頭はひらにあやまって頼んで、この恐ろしい質物しちもつを持って帰ることにして貰った。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
以て質物を請出し賣拂ひてのちに市之丞へ返しても仔細なしと私し共兩人相談のうへ二十五兩のうち十三兩三分にて質物しちもつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
質物しちもつは預かり物ですから、くらにしまって大切にして置くべきですが、物が珍らしいので薄馬鹿の辰公がそっと持ち出した。いや、辰公ばかりでなく、それをおだてた奴がほかにあるんです。
偖質屋よりは今日中猶豫いうよ致し明日は是非とも質物しちもつ相流し候旨ことわりに來りければ文右衞門は途方とはうにくれ如何はせんと女房お政に相談さうだんなしけるにお政も太息といき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その短刀は近江屋の土蔵にある質物しちもつを義助が持ち出したのである。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)