貴男あなた)” の例文
ヨシユキ、何か考えている? 惚れ/″\とわたしの俳優羅馬ローマ皇帝が。妾は貴男あなたに対する研究心を根気よく棄てない、まるでアラビアの貴婦人みたいに。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
アレは、新田さん、貴男あなたひそかに作つて生徒に歌はせたのだと云ふ事ですが、眞實ほんとですか。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その時の汽車の運テン手が、貴男あなただったのでご座います。そして、なんと言う貴男は親切なおかたでしょう。妾の母のタマシイのために、貴男は花環をたむけて下さいました。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
妾にはわかる、貴男あなたのお姿が! おお直ぐそこにおでなさる。……ああ直ぐにも手が届きそうだ。……左様ならよ、三之丞様! 妾は死んで参ります。……妾は信じて疑いません。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ヨシユキ、貴男あなた戯談じょうだんは私達の国では貴族しか云わなかったのです。それにいまでは貴族は殺されてしまうし、私はボルシェヴィズムの女なのです。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
貴男あなたに少しお聞き申したい事がありますがナ。エート、生命いのちの森の……。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたしは、十方舎の一人娘トヨでご座います。この手紙を貴男あなたがおヨミになる頃には、もう妾は少しも恥かしい事を知らない国へ行っております。だから妾は、どんな事でも申上げられると思います。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)