しろもの)” の例文
左の手のこぶしを開いて見せた。右の手がしろものの相図になるように、左の手は銭の相図になる。これは五貫文につけたのである。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かくてこの身はやうなきしろものとなりぬ。たと羅馬ロオマわたりに持ち往きてらんとし給ふとも、盾銀たてぎん一つ出すものだにあらじ。かどある生活なりはひわざをも知らず。
宮崎はこれまでも、よそに買い手のないしろものがあると、山椒大夫がところへ持って来ることになっていた。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しろものだに善くば、その産地を問ふことをもちゐず。友よ、善き子よ。我がためにヘブライオスの語を學べ。我も諸共に學ばんとす。たゞその學びさまを殊にせんのみ。
「うぬまで死なせてなるものか。大事なしろものじゃ」
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)