あだ)” の例文
東西のある乾坤けんこんに住んで、利害の綱を渡らねばならぬ身には、事実の恋はあだである。目に見る富は土である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
押領あふりやうせんとたくむ智慧ちゑの深き事はかるべからずと雖も英智の贋物にせものにして悉皆こと/″\邪智じやち奸智かんちと云ふべし大石内藏助は其身放蕩はうたうと見せて君のあだを討ちしは忠士の智嚢ちなうを振ひ功名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
背後うしろからおえいの髷をくわえてうしろへ引倒して、花嫁の美くしゅうこってりとお粉粧しまいをした顔を馬がモリ/\ッと噛みましたから、これは全く馬が多助のあだを討ったようなものでございます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが手下の楊醜ようしゅうが、たちまち心変りして張楊を殺し、その軍をったところから大混乱となり、軍の眭固けいこと申す者が、またまた、張楊のあだといって、楊醜を討ち殺し、人数をひきいて
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)