御愁傷ごしゅうしょうといふやうに聞え候て、物寂しき心地致され申候。雨あがりの三日月みかづき、夕焼雲の棚曳たなびくさまもの大木の梢に打眺め候へば誠に諸行無常しょぎょうむじょうの思ひに打たれ申候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
俯向き加減に首をチヨコ/\振りながら歩く今日此の頃のリヽーを見ると、諸行無常しょぎょうむじょうことわり手近てぢかに示された心地がして、云ふに云はれず悲しくなつて来るのであつた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と云う慣例かんれいの挨拶をわして、其のむれに入る。一本の旗には「諸行無常しょぎょうむじょう」、一本には「是生滅法ぜしょうめっぽう」、一本には「皆滅々己かいめつめっき」、今一本には何とか書いてある。其上にはいずれも梵字ぼんじで何か書いてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三界万霊さんがいまんりょう諸行無常しょぎょうむじょう。)
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
俯向うつむき加減に首をチヨコ/\振りながら歩く今日此の頃のリヽーを見ると、諸行無常しょぎょうむじょうことわり手近てぢかに示された心地がして、云ふに云はれず悲しくなつて来るのであつた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
南北朝以来戦乱永く相つぎ人心諸行無常しょぎょうむじょうを観ずる事従つて深かりしがその厭世えんせい思想は漸次時代の修養を経てまづ洒脱しゃだつとなりついで滑稽諧謔に慰安を求めんとするに至れり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
俯向うつむき加減に首をチョコチョコ振りながら歩く今日この頃のリリーを見ると、諸行無常しょぎょうむじょうことわり手近てぢかに示された心地がして、云うに云われず悲しくなって来るのであった。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)