調子トーン)” の例文
「さうしなければ自分の着物といふ気がしない筈だがね。色や柄が自分自身の調子トーンにしつくり合ふ点から言つてもそれがあたりまへだもの。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
と、その孔雀の笑ひ声と、同じやうに、恰も音楽は孔雀の指導によつて奏されてゐるかのやうに、その調子トーンを低く落してコロコロと鳴り渡りました。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
切迫塞つた苦しい、意識を刺戟する感想かんじでなくて、余裕のある、叙情的リリカル調子トーンのある……畢竟つまり周囲あたりの空気がロマンチツクだから、矢張夢の様な感想ですね。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
壁絨カアルベートもある、椅子も食卓ももちろん在る。だがこれ等が茲では物体では無い。すべては触れられぬ調子トーンに化し、目に見られぬ匂いに立ち登る。電燈の照明も文芸復興期の夢のままだ。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
よつてまた音韻以外、およそ言葉のもつありとあらゆる屬性——調子トーンや、拍節テンポや、色調ニユアンスや、氣分ムードや、觀念イデア——を綜合的に利用する。即ちかくの如きものは、實に言葉の一大シムホニイである。
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
一面に薄靄のかかった一様な調子トーンである。
海底の散歩 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
切迫塞つた苦しい、意識を刺戟する感じでなくて、餘裕のある、叙情的リリカル調子トーンのある……畢竟周圍の空氣がロマンチックだから、矢張り夢の樣な感じですね。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
蕪村の句の特異性は、色彩の調子トーンが明るく、絵具が生々なまなましており、光が強烈であることである。そしてこの点が、彼の句を枯淡な墨絵から遠くし、色彩の明るく印象的な西洋画に近くしている。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)