訪問おとず)” の例文
そうしてよく須永のうち訪問おとずれた。一つはいつ行っても大抵留守の事がないので、行く敬太郎の方でも張合があったのかも知れない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夜治子より手紙来たり、今日ひる過ぎひそかに訪問おとずれて永久とこしえの別れを告げんと申し送れり。永久とこしえの別れとは何ぞ。かれの心はかき乱されぬ。昨夜はほとんど眠らざりき。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そして夫れから三月経った今日こんにち心霊学者のフィリッポ博士がこの地に訪問おとずれて来たのであった。
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
比田と兄がそろって健三のうち訪問おとずれたのは月の半ば頃であつた。松飾の取り払われた往来にはまだどことなく新年のにおいがした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんな具合で作右衛門方を出、蘭人居留地へ出かけて行き、ビショット邸を訪問おとずれた。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼の家を再度訪問おとずれたのは、それからまた二三日経った梅雨晴つゆばれの夕方であった。ふとった彼は暑いと云って浴衣ゆかたの胸を胃の上部まで開け放ってすわっていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
刑事や巡査に案内されて心霊学者のフィリッポ氏が真先に訪問おとずれた土地というのは「バルビューさんの幽霊」がまだこの浮世に生きていた頃そのお父さんのコックニー博士と一緒に工場を
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
然しその夜鴉の城へ、彼は小児の時度々たびたび遊びに行った事がある。小児の時のみではない成人してからも始終訪問おとずれた。クララの居る所なら海の底でも行かずにはいられぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冬薔薇の花のしぼみかけた心地よい五月の或夕暮に、私はドン・ムリオを訪問おとずれた。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
訪問おとずれる。しんとして返事がない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)