訥升とっしょう)” の例文
それは明治三十年から三十二年にわたる頃で、その一座は中村芝翫しかん、市村家橘かきつ、沢村訥升とっしょう、先代の沢村訥子とっし尾上おのえ菊四郎、岩井松之助などであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると姉達はこの縮緬ちりめんの模様のある着物の上にはかま穿いた男のあといて、田之助たのすけとか訥升とっしょうとかいう贔屓ひいきの役者の部屋へ行って、扇子せんすなどをいて貰って帰ってくる。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我当がとうの片桐且元、芝翫しかんよどかた、高麗蔵の木村重成、訥升とっしょうの銀之丞などで、わたしは見物しないので何とも言えないが、淀の方と銀之丞が最も好評であったように聞いている。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もっとも幼少の頃は沢村田之助とか訥升とっしょうとかいう名をしばしば耳にした事を覚えている。それから猿若町さるわかちょうに芝居小屋がたくさんあったかのように、何となく夢ながら承知している。