触書ふれがき)” の例文
という触書ふれがきが廻った。そして、その日から千坂家の者が各屋敷をめぐり、びしびしと督促とくそくしてすべての貯蔵米を城へ運びこんでしまった。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
このたびの大火にあたって、いつぞや、宇津木兵馬が触書ふれがきを読んだ高札場こうさつばのあたりだけが、安全地帯でもあるかのように、取残されておりました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この時において倹約の触書ふれがきを出し、強いて一般人民をして質素の生活をなさしめんと欲するも、それに得べけんや。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この頃のお触書ふれがき。士農工商ある中に、両替仲間相場立ち、大銭おおぜに小銭こぜにを打並べ出しゃ、お白洲しらすでしかりゃせぬ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いつ誰がしたものか、辻々に高札が立って、「政治向きに不正不義あれば訴訟せよ、監察使みずから奉行所においてきくべし」という触書ふれがきがはられた。
自分一個の器用で手紙の文字や触書ふれがきの解釈ぐらいは人並み以上にやってのけるが、悲しいことには、こんなみやびやかな文字を見ると、男でありながらと
とにかくいってみなければならぬ、と思ったのであるが、そのとき城中から、使番が馬で触書ふれがきを示しに来た。
四日のあやめ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
饑饉年が来るから用心しなさいと言って、その晩、夜どおし触書ふれがきをつくって諸方へ廻して、皆の者に勧めることには、明地あきち空地くうちは勿論のこと、木棉わたを植えた畑をつぶしてもいいから
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すわこそ一大事、直ちに高札触書ふれがきを撤去しなければならぬ、かの酷烈無比を極めた生活のかせ、あらゆる食糧物資の統制と制限令を、もし監察使に見られたら最後だ。
最初に宇津木兵馬が触書ふれがきを読んだ例の高札場のところ。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)