見遁みの)” の例文
「いいえ、不可いけません。御前様のおっしゃりつけです。どうしても御連れ申します。」「そうはいわずに見遁みのがしておくれ、頼むわねえ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ウワーッ、荒熊だ荒熊だ!」「熊と相撲を取るんだな」「見遁みのがせねえぞ見遁がせねえぞ!」見物は一度に喝采した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「よせ」と、小川は鋭く通訳あがりをにらんだ。主人はどっしりした体で、胡坐あぐらいて、ちびりちびり酒を飲みながら、小川の表情を、睫毛まつげの動くのをも見遁みのがさないように見ている。
鼠坂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「もし役に立つ武士なら、山賊の手下の吾々が、このように大奥へ通るのを見遁みのがしておく訳はない」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しいて敵に内通をしたとはいはん、が、既に国民の国民たる精神のない奴を、そのままにして見遁みのがしては、我軍の元気の消長に関するから、きっと改悟の点を認むるか
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しいて敵に内通をしたとは謂わん、が、既に国民の国民たる精神の無い奴を、そのままにして見遁みのがしては、我軍の元気の消長に関するから、きっと改悟の点を認むるか
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)