見逭みのが)” の例文
かさゝぎ一羽でも、兎一疋でも、己の前は素通りはさせない。樺太から来た奴なんぞを見逭みのがしてなるものかと、不断言つてゐるさうだ。
抽斎は人の寸長すんちょうをも見逭みのがさずに、これに保護ほうごを加えて、ほとんどその瑕疵かしを忘れたるが如くであった。年来森枳園きえん扶掖ふえきしているのもこれがためである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
最初は生類御憐みで、虫も殺さぬことにして居たが、此頃では其時の気分次第、殺しもすれば見逭みのがしもする。殺しても尽きはせぬが、打ちゃって置くとえて仕様がないのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この卷見逭みのがすべきものならねど、「パオロ」一つを手離さんはいと惜しとおもひぬ。
おめえが勝手なまねをしても見逭みのがしてるんだ、今夜のことだってもしおれがそうしようと思えば、きさまに仕置をすることだってできるんだぞ、なあぶしゅうと云って、松田はそこへしゃがんだ。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)