襤褸屑ぼろくず)” の例文
星野の葉書は柿江の手の中に揉みくだかれて、鼠色の襤褸屑ぼろくずのようになって、林檎りんごの皮なぞの散らかっている間にき散らされていた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
どんなに困難な道だったか、高く秀でた額から衿首えりくびまであぶら汗が流れていたし、草鞋わらじも足袋も襤褸屑ぼろくずのように擦り切れていた。
松風の門 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は襤褸屑ぼろくずのように破けた葉っぱを纏った、貧乏な、頭痛持らしく額に筋を立てている青瓜を見る度に、あの蝋色の胡粉を散らした歪形いびつがたな頭の下に
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
そのべとべとになった蒲団も、今はこの人たちの手に引つがされて、襤褸屑ぼろくずのなかへ突っ込まれることになった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
蒲團綿やら襤褸屑ぼろくずやら何んといふこともなくつくね込むであるのも見える。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
何より澄江を驚かせたのは、その人達が痩せていることで、それはほとんど枯木のようであり、枯木が人間の形をしてい、それが襤褸屑ぼろくずを纏っている。——そう云ったように痩せていることであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)