襟筋えりすじ)” の例文
それは、いつの間にか頭を刈ってしまった理髪師が、私の襟筋えりすじるべくシャボンの泡をなすり付けたのであった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
乱数盤が、かたりと床に落ちると、数十本の乱片がそこらにみだれ散った。烈しい呼吸が、私の襟筋えりすじをかすめた。私は背筋を硬くして、じっと暗号書を見つめていた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
しかし彼がそこをまたごうとした時、ビグルナイユは荒々しく彼の襟筋えりすじをつかんだ。
そこでわたくしは、襟筋えりすじが、ぞーッと寒くなったのを、今でもよく覚えている。
第四次元の男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不思議なるかな襟筋えりすじに縫込んでありました一封の手紙が出ました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
睫毛まつげの濃い、張りのある二重瞼ふたえまぶた、青々と長い三日月まゆ、スッキリした白い鼻筋、あか耳朶みみたぼ背後うしろから肩へ流れるキャベツ色の襟筋えりすじが、女のように色っぽいんだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黄色い桐油とうゆ旅合羽たびがっぱを着た若侍が一人松の間に平伏している。薄暗がりのせいか襟筋えりすじが女のように白い。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)