裁付袴たっつけばかま)” の例文
紅い頭巾で、背中に花笠で、裁付袴たっつけばかまで、やあよいかとゆらりと出て行くと、若い町長初め、一同がやんやと拍手した。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
三つ所紋の割羽織わりばおり裁付袴たっつけばかまもいかめしい番兵が三人の人足を先に立てて、外国諸領事の仮寓かぐうする寺々から、神奈川台の異人屋敷の方までも警戒した。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その前後に二人の鬚武者ひげむしゃが立ちはだかっていた。二人とも笠は持たず、浪人らしい古紋付に大髻おおたぶさ裁付袴たっつけばかまである。無反むそりの革柄かわづかを押えている横肥りの方が笑ったらしい。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それが人に化けたような乱髪、髯面ひげづら、毛むくじゃらの手、扮装いでたちは黒紋付の垢染あかじみたのに裁付袴たっつけばかま
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
丁髷鬘ちょんまげかずら赤陣羽織あかじんばおり裁付袴たっつけばかまおやじどもが拍子木にかねや太鼓でラインしゅとかの広告ひろめ口上こうじょうをまくし立てる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
その晩、梅信亭ばいしんていで饗宴がもよおされた。この町の若い美技びぎが輪になって、そこで、あかい頭巾に花笠、裁付袴たっつけばかまのそろいで、本場の木曾踊りを踊った。だがあまりに巧緻こうちに過ぎ、柔軟に過ぎた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)