ギョウ)” の例文
彼は徒に空論を拈弄ねんろうする代りに、患者達の汚い便所を黙々と洗ふ。それが彼の宗教であり、この地味な然し偉大な苦業者のギョウなのである。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
経論ニ迷惑シテ諸人ヲ欺誑キキョウシ、往生オウジョウギョウヲ以テシュウトナストイエドモ、却ッテ、往生ノ行ヲ妨碍ボウガイセリ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思索といふ貧しい智慧の実によつて積む修養と全てをギョウに代へた人の修養はすでに雲泥の違ひがあるし、又このやうに地味な行者は地味な奇蹟を持つものである。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
彼の信条とする宗教は意識的に極度に思索が排斥されて、ギョウが全てをなしてゐる。彼に向つて宗教論を吹きかけても、彼の返答をききだすことはできないのである。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)