藻抜もぬけ)” の例文
旧字:藻拔
さてこそと取下して見ると中は藻抜もぬけからであった。ひとりで飛んで行った気づかいはないのである。
小雨そぼ降る七夕の昨夜ゆうべ久しく隠まって置いたかのお園は何処いずこへか出奔しゅっぽんしてしまったものと見え今朝方けさがた寝床は藻抜もぬけの殻となり、残るは唯男女が二通の手紙ばかりという事である。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
貴方が御結婚を遊ばして、あとまる一年、ただくものは涙ばかり、うるさく伸びるものは髪ばかり。座敷ろうではありませんが、附添たちの看護の中に、藻抜もぬけのように寝ていました。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女将スミ子が起しに行きたるに夜具の中は藻抜もぬけからとなり、枕元に破封されたる長文の女文字の手紙と並べて虎間女史に宛てたる遺書が置かれたるを発見したるより大騒ぎとなり、県当局、警察当局
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同じく藻抜もぬけのからだ。