藍玉あいだま)” の例文
醗酵させて固めたものを「藍玉あいだま」と呼び、まだ柔いのを「すくも」といいます。紺屋はこれを大きなかめに入れ、石灰を加え温度を適宜にし、かつ混ぜつつ色を出します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「しかもこの暗さはしたしい暗さだ。手ですくえるような藍玉あいだまのつらなりを見るような気がする。」
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「百姓だ。田舎で、藍玉あいだま売りをやっていたそうな、武士のくせに、腰が低うて」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると、どっかへ出かける気らしく、藍玉あいだまの手ぬぐいを泥棒かむりにして、手に、大事そうに抱えているのは、これが、あの、伊賀の暴れン坊の婿引出、柳生流伝来の茶壺こけ猿であろう。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
農村富農から藍玉あいだま仲買業や酒屋や山林業者やが派生して、必然的な道筋に添うて初期資本家を形成しても、他面彼らが依然たる封建制根底者的富農の資格をうしなっていないこと、それどころか
新撰組 (新字新仮名) / 服部之総(著)
岸には大八車にべか車、荷駄にだの馬、負子おいこなどが身動きもならぬ程に押合いへし合い、川の岸には山と積上げられた灘の酒、堺の酢、岸和田の新綿、米、ぬか藍玉あいだま灘目素麺なだめそうめん、阿波蝋燭、干鰯。
あの水祭はここで催され藍玉あいだまの俵を載せ、或は葡萄色の酒袋をにほひの滴るばかり積みかさねた小舟は毎日ここを上下する。正面の白壁はわが叔父の新宅であつて、高い酒倉は甍の上部を現はすのみ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
需用は莫大ばくだいなものであったでありましょう。さかん藍草あいぐさを植えて、それを藍玉あいだまに作ったのは徳島市から程遠くない村々で、今も訪ねますと、それは見事な蔵造くらづくりの仕事場が見られます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)