薪束まきたば)” の例文
荷駄の背には荒菰あらごもおおいかけてある。そしてがんじがらみにした男の体を鞍の上にくくしつけ、両側から柴の薪束まきたばを抱き合せてある。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄暮に先立つ夢想にはいかにうれわしい甘さがあろうとも、僕は死の先駆者たるその平穏を望まない。無窮な空間の静けさを僕は恐れる。火の上に新たな薪束まきたばを投じたまえ。
彼らはまずわら薪束まきたばを積み上げて雄鶏の巣を作ってやり、それから、火をつける。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
あだの胎児の死を眺めるような気持で冷然と、薪束まきたばの上に腰を下ろし、スパスパ煙草をくゆらし始めた。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかき光を正面しょうめんにうけて、薪束まきたばのうえにこしをかけているかげこそ、まさしく伊那丸いなまるであり、その両側りょうがわにそっているのは、木隠龍太郎こがくれりゅうたろう加賀見忍剣かがみにんけん、いつも、すきなき身がまえである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)