蕩児たうじ)” の例文
旧字:蕩兒
芭蕉の伝記もあらゆる伝記のやうに彼の作品を除外すれば格別神秘的でも何でもない。いや、西鶴の「置土産おきみやげ」にある蕩児たうじの一生と大差ないのである。
続芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「改造」に出てゐる倉田百三の『蕩児たうじの落ちる地獄』といふのは大変なものだ。よくこんなものが出せたものだと私は思つた。無論、それは道徳的にさういふのではない。
三月の創作 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
宿昔青雲の志今や漸く伸びて声名海内に揚れる時に方りて、其愛子は、特に竜駒鳳雛として、望を交友より属せられたる愛子は、蕩児たうじとならんとせり。一栄、一辱、一喜、一憂、世態大概斯くの如し。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
さうかと思へば Cercidas と云ふ所謂いはゆる犬儒派けんじゆはの哲学者は「蕩児たうじ守銭奴しゆせんどとは黄白くわうはくに富み、予ばかり貧乏するのは不都合ふつがふである! ……正義は土豚どとんのやうに盲目なのか? Themis(正義の女神)のめいおほはれてゐるのか?」
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)