蔵造くらづくり)” の例文
彼のすぐ後には蔵造くらづくりの瀬戸物屋があった。小さいさかずきのたくさん並んだのを箱入にして額のように仕立てたのがその軒下にかかっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
路地の最も長くまた最も錯雑して、恰も迷宮の観あるは葭町よしちやうの芸者家町であらう。路地の内に蔵造くらづくりの質屋もあれば有徳うとくな人の隠宅いんたくらしい板塀も見える。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
竜池は父を伊兵衛いへえと云った。伊兵衛は竜池が祖父の番頭であったのを、祖父が人物を見込んで養子にした。摂津国屋の店を蔵造くらづくりにしたのはこの伊兵衛である。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
需用は莫大ばくだいなものであったでありましょう。さかん藍草あいぐさを植えて、それを藍玉あいだまに作ったのは徳島市から程遠くない村々で、今も訪ねますと、それは見事な蔵造くらづくりの仕事場が見られます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
路地の最も長くまた最も錯雑して、あたかも迷宮の観あるは葭町よしちょうの芸者家町であろう。路地の内に蔵造くらづくりの質屋もあれば有徳うとくな人の隠宅いんたくらしい板塀も見える。
彼は徳川時代の湿しめっぽい空気がいまだにただよっている黒い蔵造くらづくりの立ち並ぶ裏通に、親譲りの家を構えて、敬ちゃん御遊びなという友達を相手に、泥棒ごっこや大将ごっこをして成長したかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)