蓋世がいせい)” の例文
私は、蓋世がいせいの得意に胸を張つて、やをら立ちあがるや、下腹の斜めのあたりに太十の所謂石のやうな拳を構へると、雷鳴の如き音声を張りあげた。
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
永く獄裏に呻吟しんぎんし、蓋世がいせいの大望を抱きながら、これをぶることあたわず、むなしく涙をのんで昊天こうてんに訴うるものも、古来決して少なくはありますまい。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「いたずらに敵をたたえるわけではないが、この仲達の観るかぎりにおいて、孔明はたしかに蓋世がいせいの英雄、当今の第一人者、これを破るは実に容易でない」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この蓋世がいせい不抜の一代の英気は、またナポレオンの腹の田虫をいつまでもなおす暇を与えなかった。そうして彼の田虫は彼の腹へがんのようにますます深刻に根を張っていった。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
景隆はかくの如き人の長子にして、其父の蓋世がいせいの武勲と、帝室の親眷しんけんとの関係よりして、斉黄の薦むるところ、建文の任ずるところとなりて、五十万の大軍をぶるには至りしなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「卜伝」と益々憐れむように、「剣をとらせたら蓋世がいせいの雄、向かうに敵ないお前だが、事理には案外暗いと見えるな。一将功成り万骨枯る、この世相が解らないか。……戦は自衛? なるほどな。 ...
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蓋世がいせいの大詩人をも之に突入するを得せしめず。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)